ウサギ・フェレットの診療案内
ウサギ・フェレットの診療案内
「昨日までは元気だったのに…」
ウサギさんは自然界では捕食される側の動物であるため、体調不良を周囲に悟られないよう隠す習性があります。「いつもと何かが違う」と感じたときには、すでに病気が進行していることも少なくありません。
当院では、エキゾチックアニマル特有の生態に基づき、ウサギさんがリラックスして受診できるよう細心の注意を払って診察を行っています。
以下のサインは、ウサギさんからの「SOS」かもしれません。早めのご相談をお勧めします。
ウサギは完全終生の草食動物で、野生下では線維質を多く含む植物を主食としています。そのため、ウサギに多く見られる病気は犬や猫とは大きく異なり、特有の注意点があります。代表的な疾患を以下にご紹介します。
細菌(パスツレラ、黄色ブドウ球菌、緑膿菌など)の増殖による炎症が主な原因です。ストレスなどで免疫力が低下した際に、飛沫や鼻汁を介して感染します。
※「ウサギ梅毒」も症状が似ていますが、原因菌が異なるため鑑別が必要です。
治療:抗生剤を中心に、整腸剤や輸液を行います。慢性化しやすいため、長期間の投薬が必要になるケースが多くあります。
予防:不顕性感染(症状に出ない感染)の場合もあるため、細菌培養検査による早期チェックや、多頭飼育時の定期検査が有効です。
エンセファリトゾーン(脳炎微胞子虫)という原虫の感染によります。尿中への排泄や、母ウサギからの胎盤感染によって広がります。
斜頸、ふらつき、回転運動(ローリング)、眼振(目が揺れる)、痙攣などの神経症状が突然現れます。ブドウ膜炎や白内障を伴うこともあります。
治療:抗原虫薬を約3週間投与します。開始が遅れると後遺症が残る可能性があるため、早期治療が不可欠です。
予防:尿が口に入らない衛生的な飼育環境を整えます。ワクチンがないため、血液検査による抗体価測定が重要です。
不妊手術をしていない3歳以上のメスでは、50〜80%が子宮腫瘍を発症すると報告されています。長期間のエストロゲン露出が関係していると考えられています。
血尿、血まじりの分泌物、貧血、腹水など。進行すると肺へ転移し、激しい呼吸困難を引き起こします。
治療:唯一の治療法は、手術による卵巣子宮摘出です。放置すると強い苦痛を伴い、予後は非常に厳しくなります。
予防:1歳未満での不妊手術が最も有効です。未手術の場合は、定期的なエコー検査での早期発見に努めましょう。
フェレットに多く見られる病気は、犬や猫と異なり特殊です。また、症状や進行の程度、治療法も異なります。
代表的なものをまとめてありますので、参考にしてください。
フェレットに多くみられる代表的な内分泌疾患のひとつが低血糖症(インスリノーマ)です。進行すると命に関わることもあるため、早期発見と継続的な管理が重要となります。
一般的に安静時の血糖値が70mg/dl以下の場合、インスリノーマによる低血糖症が疑われます。
インスリノーマは、膵臓のランゲルハンス島β細胞に発生する悪性腫瘍です。腫瘍からインスリンが過剰分泌されることで低血糖を引き起こします。進行すると膵臓全体や肝臓など、他臓器へ転移することもあります。
根治が難しいため、症状を抑えるための維持療法(ステロイド剤:プレドニゾロン)が中心です。
⚠️ 注意:糖分の経口投与は原則NG
一時的に回復しても、その後の反動で低血糖がさらに悪化する危険があります。
※痙攣などの緊急発作時のみ、応急処置として糖分を舐めさせ、直ちに受診してください。
薬で元気になっても腫瘍が消えたわけではありません。 長期投与により以下の副作用が出る場合がありますが、命に関わる疾患のため、症状に応じた薬を併用しながら治療を継続します。
当院では、ステロイドの投与量を抑えられる可能性があるため、「ビール酵母」などの栄養補助剤の併用を推奨しています。
フェレットが副腎腫瘍になった場合、「分泌されるホルモンの問題」と、「腫瘍そのものの問題」の2つが挙げられます。犬や猫とは異なり、主に性ホルモン(エストロゲンまたはアンドロゲン)が分泌され、それに伴った症状が現れます。
主な症状:
進行した場合:
通常、外観上の症状(脱毛や外陰部の腫大、乳首の発赤など)と画像検査(触診や超音波など)の両方が確認されれば、まず間違いありません。ただし、外側からの検査ですのであくまで仮診断です。
※血液検査によるホルモン量の同定などで判断するのは困難ですが、参考にすることはできます。また、レントゲン検査や超音波検査では、腫瘍が大きくなってからでないと診断ができません。
第一選択肢は外科手術による摘出となります。良性でも悪性でも、手術ができる状態であれば早めに取り除いた方が後々問題になりにくいと考えられます。但し、手術が選択できない場合は、内科療法となります。
外科手術を行う前に、フェレットが手術に耐えられるかどうかを検査します。 年齢や体力、他の疾患の有無を、血液検査やレントゲン検査により総合的に判断し、問題がない場合は試験的開腹手術を行います。 副腎腫瘍を確認した時点で確定診断とし、副腎腫瘍摘出手術を実施します。 手術は左右の副腎のうち大きく腫瘍化している側のみを摘出します。 残りの副腎は生きていくために残しておかなければなりません。
一般的に、外陰部の腫れは術後1~3週間で治まります。 脱毛が改善されるまでは、3~12ヶ月ほどかかる場合があります。 また、残された副腎が腫瘍化しないか、症状の経過観察が必要になります。
副腎は、本来生きていく上で重要なホルモンを分泌している臓器なので、それを取り除く手術はかなりフェレットに負担をかけることになります。 副腎腫瘍の手術で摘出できるのは、副腎1つだけです。 手術の際、肉眼的に左右の副腎を比較して、大きい方や異常のある方を摘出します。 そのため、肉眼的に正常と思われる残された副腎が、実際に機能的に正常であるとは限りません。 一見正常に見えても、細胞レベルでは腫瘍化しており、ホルモンの分泌が異常を来している場合があります。 この場合、手術後に症状の改善が認められなかったり、別の機能障害を起こしたりする可能性があります。
また、副腎腫瘍が大きくなってしまうと、摘出できない場合があります。 副腎は、大静脈や大動脈などの重要な血管に隣接しているため、腫瘍の大きさによってはそれらの血管を巻き込んでいる場合があります。 この場合には、摘出は断念せざるを得ません。 また、右側の副腎の場合、正常でも大静脈に接しているため、腫瘍化した右副腎の摘出は非常に危険度の高い手術となります。
副腎が悪性腫瘍であった場合は、転移の危険性があります。 悪性腫瘍か良性腫瘍かは術後の病理検査で診断します。 悪性腫瘍であった場合は、術後も経過を慎重に見ていく必要があります。
副腎腫瘍の摘出手術が困難な場合は、内科療法となります。 以下のような場合は、手術はせずに内科療法を試みるか、治療をせず経過観察を続けます。
内科療法に使用される薬は、酢酸リュープロレリンという注射薬です。 副腎腫瘍の症状を改善するために使用します。 この薬は脳下垂体に作用し、副腎から放出される性ホルモンの分泌量を減少させます。 その結果、脱毛や外陰部の腫大などの発情症状が改善されます。 また、骨髄抑制による貧血や前立腺肥大による排尿障害の回避にも有効であると考えられています。 毎月1回の注射による投薬が必要になります。 効果は約2~3ヶ月で認められます。 発毛がみられる場合の前兆として、皮膚が青黒く変色する場合があります。 3ヶ月以上投与を続けても効果がみられない場合は投与量を増やします。
また、「メラトニン」という人の不眠などに効果があると言われる栄養剤が、フェレットの副腎腫瘍の脱毛症状に効果があると言われています。 詳しい作用は分かっていませんが、性腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌が抑制されるようです。 当院では、リュープリンを増量しても効果がない場合に併用を検討します。
リンパ腫は、白血球という免疫機能を司る血液細胞の中のリンパ球が腫瘍化する病気です。 腫瘍化したリンパ球は血液の中だけでなく、リンパ節や脾臓、肝臓、腎臓、消化管(胃や腸管)、脊椎(特に腰椎)など多様な部位で増殖します。 その増殖した部位により、症状や検査、治療方法が変わってきます。
尚、リンパ肉腫、リンパ性白血病など様々な呼び名がありますが、基本的には同じ病気です。
一般的な症状は、元気・食欲の減退、削痩、微熱、脾腫などです。 多くは体表のリンパ節が腫れてきます。 頚部、腋の下、大腿部の皮下などにあるリンパ節が、シコリとして触れるようになります。 また、お腹の中のリンパ節なども腫れてきます。
症状は腫瘍が増殖した部位により変わってきます。 例えば、消化器型の物では下痢や血便、嘔吐が続きます。 脊椎型の物では神経症状が起こり、痙攣や麻痺(特に後肢)などの症状が現れます。 また、骨髄にリンパ腫が及ぶと、貧血になって粘膜色が悪くなったり、出血が止まらなくなったりします。
最初に一般的な健康診断を行います。 この段階で体やお腹の中にシコリが触れたら、そのシコリの検査を行います。 シコリが外側からの検査で見つからない場合は、レントゲン検査と血液検査を行います。 レントゲン検査では、胸部や腹部の腫瘍を捜します。 また血液検査では、リンパ球が腫瘍化していないか、肝臓や腎臓などに異常がないかなどを調べます。
視診や触診、レントゲン検査で見つかったシコリは、そのシコリがリンパ腫かどうか確認するために、危険な場所でなければ注射針を刺して、中身の細胞の一部を吸い出し検査(細胞診)します。 リンパ腫であれば、リンパ芽球と呼ばれるリンパ球が多数見つかる筈です。 シコリの細胞中にリンパ芽球細胞があれば、リンパ腫と確定できます。 但し、シコリが危険な場所にあり針生検が出来ない場合があります。 血液検査において血液中にリンパ芽球が多数存在するならば、そのシコリもリンパ腫に間違いないと考えられます。
シコリが見つからず、血液中にリンパ芽球が多数存在する場合もあります。 本来、リンパ芽球は血液にはほとんど存在しません。 ですから、リンパ芽球が血液中にあればリンパ腫の可能性は高いと言えます。
しかし、シコリがまだ小さかったり、脊椎や骨髄内に腫瘍細胞があると、リンパ腫を確定診断する事ができません。 その場合、骨に穴をあけて骨髄検査を実施したり、脊椎造影検査が必要となります。 検査に際しては、麻酔のリスクや危険性が伴う場合もあるため、獣医師とよく相談の上検査を実施するか決定しなければなりません。
リンパ腫は血液の癌と言えます。 リンパ腫のシコリがあったとしても、リンパ腫細胞は血液の中を流れています。 従って、基本的に外科手術は実施しません。 シコリを摘出する事によって延命が期待できる場合以外は、抗癌剤治療となります。
リンパ腫は抗癌剤治療により延命が期待できます。 但し、リンパ腫は完治できません。 生活の質の向上や延命効果はあっても、血液中の腫瘍を完全に除去する事はできません。 抗癌剤治療は、腫瘍の状態によって治療間隔を伸ばす事はできますが、治療そのものは一生続くことになります。
当院では、フェレットのリンパ腫に対する抗癌剤治療の目安を6ヶ月間隔で実施しています。 抗癌剤治療を開始した場合、6ヶ月間延命と生活の質の向上を目指します。
また、リンパ腫の治療として、比較的副作用の少ないステロイド療法があります。 ステロイド(副腎皮質ホルモン)には免疫抑制効果があり、それはリンパ球系細胞のアポトーシス(自殺)作用誘導と、リンパ球系細胞の細胞増殖を抑制する効果が知られています。 当院では、ステロイド療法は抗癌剤の使用を検討する間に使用することが多いです。
当院では、抗癌剤治療を行う前に飼い主様に十分に説明し、飼い主様が納得した上で抗癌剤の治療を行っています。 分からない事や疑問に思った事は、たとえ治療が始まった後でも構いませんので質問してください。 リンパ腫に効果のある抗癌剤は多種ありますが、それぞれ投与経路や効果、副作用が違います。 ここでは、一般的な問題点について記します。
抗癌剤を投与する場合、一部のものを除いてほとんどが静脈注射です。 静脈に針を刺して薬剤を注入しますが、繰り返し針を刺す事で同じ血管に注射が出来なくなりますので、別の部位の血管に注射をする事になります。 つまり、これらの繰り返しにより将来的に静脈注射が出来なくなる事になります。 その場合、他の投与経路で可能な抗癌剤に変更することになります。
また、抗癌剤は腫瘍細胞だけを標的にしているわけではありません。 主に細胞分裂している若い細胞に対して効果を示します。 リンパ腫細胞は増殖速度が速い細胞ですから、抗癌剤の効果が得られやすいです。 しかし、肝臓や腸粘膜、骨髄などの絶えず細胞分裂を続けている細胞も標的になってしまいます。 このことが抗癌剤の副作用として現れます。
抗癌剤投与は、一般的に多剤併用が原則となります。 数種類の抗癌剤を同時に投与することで、細胞分裂をしている癌細胞の各時期に対応できるようにします。 抗癌剤を投与する前には、毎回必ず一般的な健康診断と血液検査をします。 また、シコリの大きさを確認するためにレントゲン検査や超音波検査も随時行います。 この段階で異常がある場合は、まずその異常を改善してから抗癌剤投与となります。 その異常が抗癌剤の副作用による場合や、抗癌剤を継続しなければ急激に悪化する事が予測される場合、またはその異常がリンパ腫による場合は、異常部位の治療と同時進行で抗癌剤を投与したり、抗癌剤の投与量を減らしたりします。
抗癌剤が有効に作用し、検査上リンパ腫が確認できなくなれば、抗癌剤の投与間隔を徐々に延長していきます。最終的に抗癌剤の投与を中止できれば、再発の危険はありますがかなりの延命が期待できます。しかし、そこまで順調に治療できるのは、抗癌剤治療を行っているフェレットのごく一部で、実際は上手く延命できても2~4週間ごとの抗癌剤投与が欠かせない場合がほとんどです。
抗癌剤を投与する際、必ず事前に血液検査やレントゲン検査などの諸検査を行います。また、抗癌剤の種類によっては入院点滴治療が必要となります。これらの検査費用に抗癌剤投与費がかかるため、1回の抗癌剤治療におおよそ1~2万円かかります。また、抗癌剤の投与を開始した1~2ヶ月間は投与間隔も短いため、その分飼い主様の費用の負担は大きくなります。
人間と同じインフルエンザウイルスに感染することにより発症します。人間からフェレットまたはフェレットから人間へ、咳やクシャミから伝染する人獣共通伝染病です。
症状も人間と変わりはありません。 軽度では咳、クシャミ程度ですが、重度では40℃以上の発熱、咳、クシャミ、鼻水、元気や食欲の減少などです。 体力のない幼児期や老齢期では命に関わります。
主に症状から判断します。 また、近くにインフルエンザの人間やフェレットが居ればほぼ確定です。 人間のインフルエンザ診断キットを使用することもあります。
体力の温存が必要です。 暖かくして、加湿し、栄養のあるものを与えてください。 症状を緩和する為に抗生剤や消炎剤、インターフェロンなどの投薬が必要です。 初期の場合、タミフルなど人間用のインフルエンザ治療薬も効果がありますが、使用の際には副作用など注意が必要です。 衰弱が激しい場合は入院治療となります。
残念ながら、ワクチンはフェレットでは確立されていません。 インフルエンザ患者に近づけないことが最善です。
パルボウイルスに感染することにより発症します。 フェレットやミンクでは、体液や便などの排泄物から伝染します。 パルボウイルスは強力で、乾燥して粉末になった便からでも感染します。 犬や猫にもパルボウイルス感染症はありますが、他種の動物には伝染しません。
原因不明で難治性の下痢、嘔吐、咳、衰弱、下半身のふらつきなどです。 治療中は症状が治まっても、治療を止めるとすぐ再発するような症状が認められます。
アリューシャン病の診断は非常に困難です。 症状から感染を疑うことができる場合もありますが、ほとんどは特徴的な症状がありません。 血液検査をすることで確定します。 血液の生化学検査で総蛋白やグロブリンを測定し、著しい増加が認められれば、抗体価検査を行います。 何回か検査を繰り返さないと診断できない場合もあります。
完治はできません。 対症療法で症状を緩和させます。 ステロイドや抗生物質、インターフェロンなどで進行を遅らせます。
ワクチンはありません。 感染動物に近づけないことと、フェレットに触る前後に必ず手を洗い、人間がウイルスを運ばないように心掛ける事が大切です。 特にお感染フェレットがいる場合は、消毒が重要です。 普通の石鹸やアルコールではウイルスは死滅しませんので、塩素などの消毒薬が必要となります
ジステンパーウイルスに感染することにより発症します。感染フェレットとの接触や、感染動物の排泄物、分泌物を介して伝染します。非常に伝染力が強く、致死率も極めて高い恐ろしい病気です。
潜伏期間は通常1週間前後です。初期症状は40℃以上の発熱、食欲不振です。その後、顎の下や股の皮膚が赤くなったり、目ヤニや鼻水が出たりします。さらに進行すると、足の裏の皮膚が硬くなる「ハードパット」と呼ばれる症状が現れます。末期には神経症状(痙攣、麻痺など)を起こし、死に至ります。
主に症状やワクチンの接種歴から判断します。補助的に、血液検査や結膜などの細胞診によりジステンパーウイルスを確認します。最近では、迅速診断キットやPCR検査を用いることもあります。
残念ながら、フェレットのジステンパーに対する特効薬はありません。二次感染を防ぐための抗生剤投与や、脱水を防ぐための輸液、強制給餌などの対症療法が中心となります。一度発症すると救命は非常に困難です。
唯一の確実な予防法は、定期的なワクチン接種です。年1回の混合ワクチン接種を強くお勧めします。
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