2026年9月28日

大切な家族の『声なきサイン』を見逃さないために。
神奈川県茅ケ崎市、アンジェス動物病院 院長 獣医師の朝岡紀行です。
犬・猫の一次診療で培ってきた総合的な視点を基盤に、
現在は馬の健康管理・ウェルネスケアの分野にも活動を広げています。
小動物から馬までを視野に入れる“総合獣医師”として、
人と馬のより良い関係づくりにつながる獣医療とケアの可能性を探究しています。
Anges Horse Wellness Care Service
Healing Through Horses ~馬を通して、人が自分らしく羽ばたく~
「レプトスピラ症」という病気をご存じでしょうか。
犬の飼い主さんでも、名前は聞いたことがあっても、
「どんな病気なのか」「うちの犬にも関係があるのか」まではよく分からない、
という方も多いかもしれません。
レプトスピラ症は、
病原性レプトスピラという細菌によって起こる感染症です。
犬だけの病気ではなく、
人にも感染する可能性がある人獣共通感染症の一つです。
国内でも、人と犬の両方で毎年感染例が報告されています。
どのように感染するの?
レプトスピラ症の主な感染源となるのは、感染した動物の尿です。
特に重要なのが、ネズミを中心としたげっ歯類です。
感染した動物の尿そのものだけではなく、尿によって汚染された
• 水たまり
• 川や池などの水
• 湿った土
• 泥
などに触れることでも感染する可能性があります。
レプトスピラは、
皮膚にある小さな傷や、口・鼻・目などの
粘膜から体内へ侵入します。
そのため、
犬が散歩中に水たまりへ入ったり、
汚染された水を飲んだりすることで
感染する可能性があります。
「山や川に行く犬だけがかかる病気」
というイメージを持たれることもありますが、
必ずしもそうとは限りません。
犬の感染報告が増えています
犬のレプトスピラ症の届出数は、これまで年間25〜30件程度でした。
しかし、近年は増加傾向がみられ、
2025年には従来のおよそ3倍に達しています。
その背景として、
ネズミの増加や、大雨・洪水などの環境変化が
影響している可能性が考えられています。
また、レプトスピラ症は診断が簡単な病気ではありません。
一つの検査だけで確定診断できないこともあるため、
実際には診断されていない感染例が存在し、
報告されている数字は「氷山の一角」である可能性もあります。
特に注意したいのは夏の終わりから秋
レプトスピラは、暖かく湿った環境で生存しやすい細菌です。
そのため、大雨が多くなる夏の終わりから秋にかけて、
環境中で感染するリスクが高まります。
実際に、犬のレプトスピラ症は
9〜11月頃に発生が増える傾向があります。
特に、台風や大雨、河川の氾濫の後は
散歩場所を慎重に選びましょう。
冠水した道路や公園、
川沿いや河川敷、
水たまりや泥が残る場所は避けてください。
線状降水帯による大雨があった地域でも、
浸水した場所には近づけないようにしましょう。
水たまりの水を飲ませないことも大切です。
ただし、秋だけの病気というわけではありません。
ほかの季節にも感染報告はあるため、
年間を通して感染する可能性がある病気として
考えておく必要があります。
都市部の犬も無関係ではありません
レプトスピラ症というと、
“自然の多い地域で発生する感染症”
という印象を持たれがちです。
しかし、主な感染源となるネズミは、都市部にも生息しています。
国内ではネズミのレプトスピラ保有状況を
調べた報告はまだ多くありませんが、
近年のデータからは、
都市部でも感染リスクが存在する可能性が示されています。
つまり、「街中しか散歩しないから大丈夫」とは言い切れません。
いつもの散歩道でも、
水たまりや排水路、ごみ置き場など、
ドブネズミがいそうな場所には近づけないようにしましょう。
特に大雨や浸水の後は、散歩コースを変更してください。
大切なのは「知っておくこと」
レプトスピラ症は、日常生活の中では
なかなか意識することのない感染症です。
しかし、感染動物の尿で汚染された水や土から感染すること、
近年犬での届出数が増えていることを考えると、
決して無関係な病気ではありません。
特に、大雨の後や水辺へ出かける機会が多い犬では、
日頃から注意しておくことが大切です。
また、レプトスピラ症は犬だけではなく、
人にも感染する人獣共通感染症です。
だからこそ、愛犬の健康を守ることは、
ご家族の健康を守ることにもつながります。
とは言え、必要以上に怖がる必要はありません。
まずは、
「こういう感染症がある」
「こんな場所では感染する可能性がある」
と知っておくこと。
そして、愛犬の生活環境や行動範囲に応じて、散歩場所に気を配り、
レプトスピラ症に対応するワクチンの接種歴を確認してください。
接種していない場合や追加接種の時期が分からない場合は、
生活環境に合ったワクチン接種を
かかりつけの動物病院に相談しましょう。
ただし、ワクチンを接種しても感染を完全に防げるわけではないため、
水や泥、ネズミがいそうな場所を避ける対策も続けてください。

執筆者:朝岡紀行(獣医師)
・アンジェス動物病院 院長
・Anges Horse Wellness Care Service 主宰
犬・猫のホームドクターとしての一次診療に加え、
現在は馬の健康管理・ウェルネスケアにも取り組んでいます。
乗馬クラブや牧場における健康管理、飼養管理やケア体制への助言、馬の臨床獣医師との連携など、
現場の課題に寄り添いながら、新しいウェルネスケアの形を育んでいます。
私が目指しているのは、
「犬猫の一次診療動物病院院長 × 馬も診る総合獣医師」として、
犬・猫に加え、馬の健康を支えることを通じて、
人と動物がより健やかに共生できる社会づくりに貢献することです。
犬や猫、馬に関わる皆さまと知見を共有し、
新しい価値を共に創っていけることを楽しみにしています。
Anges Horse Wellness Care Service は、
「Healing Through Horses ~馬を通して、人が自分らしく羽ばたく~」
をコンセプトに、人と馬のウェルネスを育むことを目指す取り組みです。
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