2026年6月23日

大切な家族の『声なきサイン』を見逃さないために。
神奈川県茅ケ崎市、アンジェス動物病院 院長 獣医師の朝岡紀行です。
犬猫の一次診療とともに、獣医療の可能性を広げるため、現在は馬の臨床研究にも携わっています。
犬や猫の寿命が延び、シニア期を一緒に過ごす時間は
以前よりもずっと長くなりました。
その中で、
「この年齢で病院に行くべき?」
「様子を見ていて大丈夫?」
と迷う場面が増えたと感じている飼い主さんも
多いのではないでしょうか。
高齢期のケアには、はっきりとした正解がないからこそ、
不安になるのは自然なことです。
「年だから仕方ない」と思っていませんか?
食欲が落ちた、動きがゆっくりになった、夜鳴きや徘徊が増えた――。
こうした変化は、
「年だから仕方ない」と受け止められがちです。
しかし実際には、
痛みや不安、内臓の不調、感覚や認知機能の変化
などが関わっていることも少なくありません。
「老衰」とひとくくりにしてしまうことで、
本当は気づけたはずのサインが見過ごされてしまうこともあります。
「いつもと少し違うかも」と感じるその感覚は、
とても大切な気づきです!
シニア期の診療は「治療する・しない」の二択ではありません
シニア期の診療は、「治療する・しない」の二択ではありません。
若い頃のように“治すための治療”を目指すだけでなく、
負担と効果のバランスを考えながら、
その子にとって無理のない選択をしていく時期でもあります。
検査や投薬を進めることもあれば、
環境を整えたり、
経過を見守ることが最善となる場合もあります。
「今、この子が一番つらいことは何か」という視点で考えることが、
シニア期ケアの軸になります。
見守るという判断も、立派な積極的なケアのひとつです。
サプリメントとの上手な付き合い方
サプリメントは治療の代わりになるものではなく、
日常ケアを支える補助的な選択肢です。
期待しすぎてしまうと、
不安や失望につながることもあるため、
目的や限界を獣医師と共有したうえで取り入れることが大切です。
「病気が治るか」ではなく、
「生活がどう変わるか」という視点で考えると、
納得して継続しやすくなります。
早めの相談が選択肢を広げてくれます
高齢の犬や猫のケアで大切なのは、
「困ってから相談する」よりも、
「少し気になる段階で相談する」ことです。
はっきりした症状が出てからでは、選
べる対応が限られてしまうこともあります。
一方で、早めに相談ができれば、
負担の少ない工夫や予防的なケアを提案できる余地が広がります。
定期的に受診し、
「いつもの状態」をかかりつけの獣医師と共有しておくことは、
将来の判断を支える大きな力になります。
飼い主さん自身も無理をしないでください
そして忘れてはいけないのが、飼い主さん自身のケアです。
夜鳴きや徘徊、排泄や介護が続くと、
心身の負担は静かに積み重なっていきます。
「家族だから」
「自分がやらなければ」と
一人で抱え込む必要はありません。
周囲の助けを借りること、
環境を整えること、
必要であればセカンドオピニオンを求めること、
そして「休むこと」も大切なケアの一部です。
シニア期は、できなくなることが増える一方で、
これまで以上に深く向き合える時間でもあります。
迷いや不安を一人で抱えず、
獣医師と対話しながら
その子らしい毎日を一緒に考えていきましょう。
