2026年2月16日

最終更新:2026年2月 (2021年記事を再編)
この記事は2021年に執筆したものですが、2026年現在の最新データと社会情勢に合わせて、
全面的に加筆・修正したものです。
大切な家族の『声なきサイン』を見逃さないために。
神奈川県茅ケ崎市、アンジェス動物病院 院長 獣医師の朝岡紀行です。
近年、各地で激甚化する自然災害に対し、
ペットを連れての「同行避難」のあり方が改めて問われています。
自治体の防災計画に「同行避難」の文字があっても、
現場では避難所の規模や被害状況により、
必ずしもスムーズに受け入れられるとは限りません。
特に短期間の避難を想定した「自主避難所」では、
ペットの受け入れ体制が整っていないケースがほとんどなのが実情です。
災害時、愛する家族を守り抜くために。
私たち獣医師が今、飼い主様に強くお伝えしたいのは
「避難所だけを頼りにしない」という備えです。
78%が選択した「避難所以外」という選択肢
2019年の大規模台風時の調査では、非常に興味深いデータが出ています。
自治体の避難所を利用した飼い主様が22%だったのに対し、
78%もの方が「自ら避難所以外の場所」を確保して避難していました。
この数字は、避難所という一つの選択肢に縛られず、
個々の状況に合わせて動く「臨機応変さ」こそが、
ペットの命を救う鍵であることを示しています。
鍵を握る「分散避難」と「在宅避難」
現在、推奨されているのが、複数の避難先をあらかじめ確保しておく
「分散避難」です。
・知人・親戚宅や飼い主仲間: 気心の知れた場所であれば、ペットのストレスも最小限に抑えられます。
・車中避難やホテル利用: プライバシーが保てる一方、エコノミークラス症候群などの健康管理には注意が必要です。
・安全を確保した上での「在宅避難」: 建物に倒壊の恐れがなく、浸水リスクも低い場合は、ペットにとって最もストレスの少ない自宅で過ごすことが、合理的な選択肢となります。
特に猫の場合、慣れない避難所のケージ内で長時間過ごすことは、
犬以上に心身への負担が大きくなります。
一時的に避難所へ逃げたとしても、
その後に移動できる「第二の避難先」を想定しておく必要があります。
獣医師が危惧する「支援の限界」
大規模災害では、私たち動物病院や行政などの
「支援する側」も被災者となります。
道路の寸断やライフラインの停止により、
外部からの助けが届くまでに数日を要することも珍しくありません。
だからこそ、重要になるのが
「自助(自分で守る)」と「共助(仲間で助け合う)」です。
「誰かが助けてくれるだろう」ではなく、「自分たちで数日間は生き抜く」ための備え
(フードの備蓄、薬の準備、マイクロチップの登録など)を徹底することが、
結果として動物たちの命を救う最大の近道になります。
動物病院としてできること
私たち獣医師も、
災害時に地域のペットたちのために何ができるか、日々検討を重ねています。
しかし、避難の主役はあくまで飼い主様とご家族です。
この記事をきっかけに、ぜひご家族やペット仲間で
「もし今日、災害が起きたらどこへ逃げるか?」を具体的に議論してみてください。
その議論の一つひとつが、非常時の確かな「盾」となります。
