2026年2月28日

最終更新 : 2026年2月 (2021年記事を再編)
この記事は2021年に執筆したものですが、2026年現在の最新データと社会情勢に合わせて、
全面的に加筆・修正したものです。
大切な家族の『声なきサイン』を見逃さないために。
神奈川県茅ケ崎市、アンジェス動物病院 院長 獣医師の朝岡紀行です。
不妊・去勢手術は、望まない繁殖や生殖器の病気を防ぐために非常に重要ですが、
一方で「太りやすくなる」という避けられないリスクを伴います。
・犬: 手術後、食事摂取量が最大30%増加するというデータがあります。
・猫: 手術3ヶ月後には、メスで17%、オスで27%も摂取量が増える傾向にあります。
それだけでなく、
特に猫では手術後に活動量が50%も減少するという報告もあります。
なぜ、これほどまでに劇的な変化が起きるのでしょうか。
「おねだり」が激しくなる医学的理由
手術によって「エストロジェン」などのホルモン分泌が変化すると、
脳の満腹中枢への働きかけが変わり、自発的な食欲が増進します。
つまり、体が必要とするエネルギー(代謝量)は減っているのに、
脳は「もっと食べたい!」という強い信号を出し続けるのです。
この「摂取カロリーの増加」と「要求カロリーの減少」のダブルパンチこそが、肥満の正体です。
「ダイエットフード」が失敗する3つの落とし穴
病院で勧められた低カロリーフードに変えても、なかなか痩せない……。
そこには、飼い主様の愛情ゆえの「心理的な壁」が立ちはだかっています。
1.おねだりに負けてしまう: 食欲が増した愛犬・愛猫の必死な要求を拒絶するのは、飼い主様にとって非常に辛いことです。
2.「低カロリー」という安心感: ダイエット用だから少し多めでも大丈夫、という油断がカロリーオーバーを招きます。
3.多頭飼育の難しさ: 他の子の分まで食べてしまったり、誰がどれだけ食べたか把握しきれなかったりするケースも少なくありません。
鍵を握るのは「満腹感」のコントロール
無理な食事制限は、ペットにとっても飼い主様にとってもストレスになります。
そこで重要になるのが、「満腹感を高めて、自発的なおねだりを減らす工夫」です。
・高タンパク・高食物繊維: 犬ではこの組み合わせにより、満足感が高まり、自然と食べる量が抑えられることが分かっています。
・猫には「水分量」が重要: 猫に極端な食物繊維を与えると、味が落ちて食べなくなることがあります。猫の場合は、水分を多く含むウェットフードを積極的に活用することで、満腹感を高めつつ摂取カロリーを抑えるのが効果的です。
獣医師からのアドバイス:今日からできる3つのこと
不妊・去勢手術後は、体質が完全に変わったと認識しましょう。
1.手術後すぐにフードを見直す: 太ってから変えるのではなく、手術を機に適切なフードへ切り替えます。
2.月2回の「体重測定」: 少なくとも2週間に一度は体重を測り、小さな変化を見逃さないようにしましょう。
3.給与表はあくまで「目安」: パッケージに書いてある量は出発点に過ぎません。その子の体調や体重の変化に合わせて調整する必要があります。
最後に
「おやつを減らしているのに痩せない」「適正量がわからない」といった場合は、
決して自己判断せず、ぜひ当院にご相談ください。
肥満は万病の元。
その子にとってベストな体重を維持することは、寿命を延ばすための立派な「治療」の一つです。
無理なく、笑顔で続けられるダイエットプランを一緒に立てていきましょう。
