2026年2月21日

最終更新 : 2026年2月 (2021年記事を再編)
この記事は2021年に執筆したものですが、2026年現在の最新データと社会情勢に合わせて、
全面的に加筆・修正したものです。
大切な家族の『声なきサイン』を見逃さないために。
神奈川県茅ケ崎市、アンジェス動物病院 院長 獣医師の朝岡紀行です。
人医療では、厚生労働省が「ロコモティブシンドローム(通称:ロコモ)」を
要介護の三大要因の一つとして掲げ、積極的な啓蒙活動を行っています。
実は、ペットの世界も全く同じです。
変形性関節症や椎間板ヘルニアといった運動器の疾患は、高齢期を支える大きな壁となります。
これからは、内科的・外科的な治療が必要になる「前」の段階で運動器検診を行い、
適切なケアを開始する「予防的なプログラム」が不可欠です。
飼い主様が気づかない「痛み」のサイン
犬の変形性関節症の発症率は20〜25%と言われており、特に大型犬では74%、
小型犬でも34%にのぼるというデータがあります。
ここで獣医師として警鐘を鳴らしたいのは、
「レントゲンで異常がはっきり見える時には、すでに最終段階に近い」
という事実です。
ある調査では、実際に疾患があった子のうち、
飼い主様が症状に気づいていた割合は関節症で約50%、脊椎症にいたってはわずか7.6%でした。
多くのペットが「言葉にできない痛み」を抱えたまま、見過ごされているのが現実です。
猫の90%が抱える「隠れた関節症」
特に注意が必要なのが猫ちゃんです。
12歳以上の猫の90%に変形性関節症が存在すると言われています。
「高齢だからあまり動かなくなった」「ジャンプしなくなった」
それは単なる老化ではなく、肘の痛みや腰(仙椎領域)の違和感が原因かもしれません。
猫は痛みを隠すのが非常に上手な動物です。
だからこそ、プロの目による定期的なチェックが重要になります。
早期発見のための「運動器検診」
当院では、健康診断の際にも以下のステップで運動器の状態を確認しています。
1.問診・歩行検査: 飼い主様からの日常の様子の聞き取りと、歩き方のチェック
2.筋量・可動域の把握: 筋肉が落ちていないか、関節がスムーズに動くかの確認
3.触診: 痛みのポイントを特定する
4.画像検査: 異常が疑われる場合にレントゲン等を実施
画像で異常が出る前の「なんとなく動きが硬い」という初期段階こそ、
最も効果的なケアができる黄金期です。
サプリメントは「薬を減らす」ための大きな武器
サプリメントについては様々な意見がありますが、近年の研究では、
「6ヶ月間の継続服用により、消炎鎮痛剤と同等の疼痛緩和や機能回復効果が期待できる」
という報告も出ています。
これは、サプリメントを上手に活用することで、
胃腸や腎臓への負担が懸念される「お薬」を減らしたり、休薬したりできる可能性を示唆しています。
当院でも、副作用のリスクを抑えつつ快適な生活を守るための、重要な選択肢の一つとしてご提案しています。
最後に
ペットの高齢化を支えるのは、高度な手術だけではありません。
症状が出る前からのサプリメント活用、
無理のないエクササイズ、
そして滑りにくい床への変更といった生活環境の改善。
これら「先回り」のケアが、愛犬・愛猫の10年後のQOL(生活の質)を決定づけます。
「うちの子、最近少し立ち上がりが遅くなったかな?」
そんな些細な気づきを大切に、ぜひお気軽にご相談ください。
