馬は「乗る」だけではなく、私たちを映す「鏡」|茅ヶ崎市のアンジェス動物病院|土日祝診療可で安心のペットケア

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馬は「乗る」だけではなく、私たちを映す「鏡」

馬は「乗る」だけではなく、私たちを映す「鏡」|茅ヶ崎市のアンジェス動物病院|土日祝診療可で安心のペットケア

2026年7月31日

馬は「乗る」だけではなく、私たちを映す「鏡」

大切な家族の『声なきサイン』を見逃さないために。
神奈川県茅ケ崎市、アンジェス動物病院 院長 獣医師の朝岡紀行です。

犬・猫の一次診療で培ってきた総合的な視点を基盤に、
現在は馬の健康管理・ウェルネスケアの分野にも活動を広げています。
小動物から馬までを視野に入れる“総合獣医師”として、
人と馬のより良い関係づくりにつながる獣医療とケアの可能性を探究しています。

Anges Horse Wellness Care Service
Healing Through Horses ~馬を通して、人が自分らしく羽ばたく~


馬に乗ったことがない人でも、馬の前に立つと
不思議なほど自分の癖が見えてきます。
焦り、力み、呼吸の浅さ、相手への伝え方。

馬はそれらを言葉ではなく、
身体全体で受け止め、
静かに返してくれる存在です。

今回は、獣医師として、そして一人の馬乗りとして感じている
「馬の新しい価値」について考えてみます。

馬は、人を映し出す動物

獣医師として、さらに一人の馬乗りとして実感するのは、
馬は単なる「大きくてきれいな動物」ではないということです。

むしろ馬は、
人の状態を驚くほど正確に映し出す存在です。
人が急いでいれば馬も落ち着きを失い、
人が力んでいれば馬の身体もこわばります。
反対に、人が静かで呼吸が整っていると、
馬も安心して動き始めます。

馬は言葉で説明してくれません。
それでも、
身体の緊張、視線、呼吸、立ち方といった
小さなサインを通して、こちらの在り方に応えてきます。

馬に触れると、多くの人がまず
「自分は思ったよりせっかちだった」
「無意識に強く指示を出していた」
と気づきます。
馬を見るつもりで近づいたのに、実は自分を見せられている。
その不思議さこそ、馬の大きな価値だと私は思います。

馬はなぜ、人に深い気づきを与えるのか

その理由の一つは、馬がもともと被捕食者として
「逃げることで身を守ってきた動物」だからです。
野生で生き延びるには、
周囲の空気の変化を敏感に察知する必要がありました。
そのため馬は、相手の声の大きさよりも、
姿勢、動きの速さ、注意の向け方、雰囲気の一貫性に強く反応します。

人間社会では、言葉でうまく取り繕うことができます。
しかし馬の前では、それがあまり通用しません。
『大丈夫だよ』と優しく言っていても、
身体がこわばっていれば、馬はそちらを信じます。

研究でも、馬は人の姿勢や表情、注意の向け方など、
複数の非言語的な情報を手がかりに人を見分け、
過去の経験も記憶していることが示されています。
つまり馬は、私たちが何を言ったかだけでなく、
どうそこにいるかを見ているのです。

この理解は、馬の福祉を守り、
より良い関わり方を考えるうえでも欠かせません。

「うまくやる」より、「調和する」を教えてくれる

乗馬未経験の方は、馬に乗ることを
「動物を操作すること」と想像しがちかもしれません。
けれど実際には、馬は自転車や自動車のように
人が一方的に動かす対象ではありません。
こちらが強く押せば押すほど、
通じなくなることもあります。

大切なのは、力で従わせることではなく、
意図を明確にし、無駄な力を抜き、
馬が理解しやすい形で伝えることです。

この感覚は、仕事や家庭での対人関係にもよく似ています。
強い言葉で人を動かそうとすると、
その場は進んでも、信頼は育ちません。
(これは選択理論心理学では、刺激反応理論に基づく外的コントロールといいます。)
一方で、落ち着いて、分かりやすく、一貫して関わると、
相手は安心して動けるようになります。

馬は、支配ではなく協調のほうが遠くへ行けることを、
身体で教えてくれる
先生です。

馬の価値は、競技や癒やしだけではない

ここで少し、具体的な場面を思い浮かべてみてください。
馬の横に立ってリードを持つだけでも、
その人の緊張は伝わります。
急いで歩き出そうとすれば馬は足を止め、
反対にこちらが深く息を吐いて歩幅をそろえると、
馬も少しずつ歩き出します。
こうした小さなやり取りの中に、人と馬の関係の本質があります。

日本ではまだ、馬というと競馬か乗馬、
あるいは特別な趣味の世界という印象が強いかもしれません。
けれど獣医療の現場から見ると、馬の価値はそこにとどまりません。

馬との関わりは、人の学びや社会の成熟にもつながっています。
たとえば、引退競走馬が
乗馬や教育活動の場で第二の役割を得ることは、
命を使い切る社会のあり方を考えるきっかけになります。
また、馬との関わりを通して
自己理解や対人理解を深める実践は、
教育や対人支援、リーダーシップ開発にも応用されつつあります。

近年の報告では、馬との非言語的な関わりが
自己認識、信頼形成、適応力といった力に結びつく可能性が示されています。
もちろん、こうした価値を語るなら、
馬の福祉が守られていることが大前提です。
馬は黙って我慢できてしまう動物でもあるため、
人が『従っているから大丈夫』と思い込まないことが重要です。
馬を尊重することは、
動物へのやさしさにとどまらず、
私たち自身の未熟さや粗さに気づくことでもあります。

馬を知らなくても、受け取れるものがある

もし今まで馬に触れたことがなくても、
難しく考える必要はありません。
まずは「人の都合で動いてくれる動物」ではなく、
「人をよく見て、自分の安全と調和を確かめながら生きている存在」
として馬を見るだけで、景色は変わります。

馬は、速さや美しさだけではなく、
言葉に頼りすぎた私たちに、
身体感覚、静けさ、信頼の作り方を思い出させてくれます。

私は獣医師として馬の病気やけがを診ますが、
同時に、馬が人に与えている“見えない効用”も
また確かにあると感じています。
馬の新しい価値とは、
何かをしてくれる便利さではありません。
私たちの関わり方そのものを問い直し、
もう少しゆっくりと、丁寧に、相手と向き合うことを
教えてくれる点にあるのではないでしょうか。


執筆者:朝岡紀行(獣医師)
・アンジェス動物病院 院長
・Anges Horse Wellness Care Service 主宰

犬・猫のホームドクターとしての一次診療に加え、
現在は馬の健康管理・ウェルネスケアにも取り組んでいます。
乗馬クラブや牧場における健康管理、飼養管理やケア体制への助言、馬の臨床獣医師との連携など、
現場の課題に寄り添いながら、新しいウェルネスケアの形を育んでいます。
私が目指しているのは、
犬猫の一次診療動物病院院長 × 馬も診る総合獣医師」として、
犬・猫に加え、馬の健康を支えることを通じて、
人と動物がより健やかに共生できる社会づくりに貢献することです。
犬や猫、馬に関わる皆さまと知見を共有し、
新しい価値を共に創っていけることを楽しみにしています。
Anges Horse Wellness Care Service は、
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をコンセプトに、人と馬のウェルネスを育むことを目指す取り組みです。

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