2026年2月23日

最終更新 : 2026年2月 (2021年記事を再編)
この記事は2021年に執筆したものですが、2026年現在の最新データと社会情勢に合わせて、
全面的に加筆・修正したものです。
大切な家族の『声なきサイン』を見逃さないために。
神奈川県茅ケ崎市、アンジェス動物病院 院長 獣医師の朝岡紀行です。
私たち獣医療関係者、そして動物と暮らすすべてのご家族にとって、
現在最も「ハイリスク」と言わざるを得ないウイルス感染症があります。
それが、マダニが媒介する「重症熱性血小板減少症(SFTS)」です。
かつては「ダニに直接噛まれないように」という注意が主でしたが、
現在は「感染したイヌやネコからヒトへ簡単に感染する」という事実が大きな問題となっています。
「致死率30%」治療薬のない現実
ヒトがSFTSを発症した場合、有効な治療薬は今のところ存在しません。
一部の抗ウイルス薬が試用されることもありますが効果は確定しておらず、
基本的には対症療法に頼るほかありません。
• ヒトの致死率: 約30%(50歳以上ではさらに重症化リスクが高まります)
• ネコの致死率: 50%以上(これまでに300例以上の診断報告があります)
この数字を見てもわかる通り、一度感染・発症してしまうと、
人間にとっても動物にとっても命に関わる極めて危険な病気なのです。
動物病院での感染連鎖を防ぐために
SFTSの恐ろしい点は、体調を崩したネコちゃんを救おうとする過程で、
飼い主様や獣医師、看護師にウイルスが伝播することです。
発症した動物の血液、唾液、排泄物には大量のウイルスが含まれています。
ネコちゃんに噛まれたり、看護中に体液に触れたりすることで感染が成立します。
特にネコちゃんはワンちゃんに比べて感染・発症しやすく、細心の注意が必要です。
要するに、これといった治療薬はなく、
ヒトでの致死率は30%程度で、
高齢なヒト(特に50歳以上!)ほど
重症化するリスクが高いとのことです。
獣医師が「SFTS」を疑うためのヒント
SFTSの初期症状は「元気がない」「食欲がない」「発熱」など、
他の病気と区別がつかない「非特異的」なものです。
そのため、診察室で獣医師が真っ先にSFTSを疑うことは非常に困難です。
診断の大きなヒントになるのは、飼い主様からの「外に出たことがあるか」という情報です。
・潜伏期間は約1週間: 「1週間前に脱走した」「たまに庭に出る」といったエピソードは、診断の生死を分ける重要な情報になります。
・「若い外ネコ」の急変は要注意: 普段元気な若い外ネコが急激にぐったりした場合は、非常に危険なサインです。
診察時には、どんなに短い時間でも
「外に出た可能性」がある場合は、必ず私たちに伝えてください。
駆除薬を過信せず「外に出さない」選択を
よく「ノミ・ダニ予防をしているから大丈夫」というお声をいただきますが、
残念ながらSFTSに関しては万全ではありません。
多くの駆除薬は「吸血したダニを殺す」仕組みですが、
SFTSウイルスは「ダニが吸血を開始した瞬間」に感染が成立してしまう可能性があるからです。
事実、しっかり予防薬を使っていた子でも感染した事例が報告されています。
最後に
ヒトの健康、そして愛猫の命を守るために最も確実で重要な予防策は、
「完全室内飼育」を徹底することです。
同居している他の子へ広げないためにも、
そして何より大切なご家族が感染しないためにも、
外の環境との接触を断つ決断をお願いします。
もし「外に出てしまった後に体調を崩した」という場合は、
防護体制を整えて診察を行う必要がありますので、
来院前に必ずお電話でその旨をお知らせください。
