2026年10月29日

大切な家族の『声なきサイン』を見逃さないために。
神奈川県茅ケ崎市、アンジェス動物病院 院長 獣医師の朝岡紀行です。
犬・猫の一次診療で培ってきた総合的な視点を基盤に、
現在は馬の健康管理・ウェルネスケアの分野にも活動を広げています。
小動物から馬までを視野に入れる“総合獣医師”として、
人と馬のより良い関係づくりにつながる獣医療とケアの可能性を探究しています。
Anges Horse Wellness Care Service
Healing Through Horses ~馬を通して、人が自分らしく羽ばたく~
〜馬とのふれあいから学ぶ、コミュニケーションとリーダーシップ〜
馬と接したことはありますか?
馬は大きく力強い動物ですが、同時にとても繊細で、
周囲の変化に敏感な動物でもあります。
そんな馬の特性を生かして、
人間のコミュニケーション能力やリーダーシップを見つめ直す
「ホースコーチング」という取り組みがあります。
近年では、企業の人材育成や
チームビルディングにも活用されており、
馬と人との関係に新たな可能性を感じさせてくれます。
馬は人の気持ちを読み取る?
馬は本来、群れで生活する草食動物です。
自然界では捕食される側の動物であるため、
周囲のわずかな変化にも
敏感に反応する能力を備えています。
人と接するときにも、
声の調子や姿勢、動作、距離の取り方など、
さまざまな情報を手がかりに
相手の状態を判断していると考えられています。
例えば、人が緊張して急な動きをすれば、
馬も警戒することがあります。
一方、落ち着いた態度で接することで、
馬が安心して近づいてくれる場合もあります。
もちろん、馬が人間の心をすべて読み取れるわけではありません。
馬自身の性格や経験、周囲の環境によっても反応は異なります。
それでも、言葉を使わずに相手と向き合う経験は、
普段の人間関係では気づきにくい
自分自身の振る舞いを見直すきっかけになるのです。
ホースコーチングとは?
ホースコーチングとは、馬とのふれあいや共同作業を通して、
“自分自身のコミュニケーションの特徴や行動の傾向に気づくこと”
を目的とした体験型の学習方法です。
一般的な乗馬レッスンとは異なり、
必ずしも馬に乗る必要はありません。
馬に近づく、触れる、引いて歩くといった活動を通じて、
相手との距離感や信頼関係を学んでいきます。
欧米などでは企業研修にも取り入れられており、
リーダーシップやチームワーク、
対人コミュニケーションを考える機会として活用されています。
馬と一緒に行う、ユニークな研修
ホースコーチングでは、
さまざまな体験プログラムが用意されています。
例えば、馬に近づいて触れるワークでは、
馬の様子を観察しながら、
相手にとって心地よい距離感を探ります。
自分のペースで一方的に近づくのではなく、
相手の反応を尊重することが大切になります。
また、二人一組で馬を引く
「ブラインドワーク」という研修もあります。
一人は目を閉じて馬を引き、
もう一人が言葉で進む方向を伝えるというものです。
目を閉じた人にとっては、
相手の指示を信頼することが必要です。
一方、指示する側には、
分かりやすく伝える能力や相手への配慮が求められます。
こうした体験を振り返ることで、
日常のコミュニケーションにも通じる
課題や気づきが生まれます。
なお、実際の研修では、人と馬の双方の安全を確保するため、
専門家による適切な管理と指導が欠かせません。
リーダーシップは「力」ではなく「信頼」
馬と関わるうえで興味深いのは、
体の大きな馬を力だけで
思い通りに動かすことは難しいという点です。
相手の状態を観察し、分かりやすい合図を送り、
適切なタイミングで働きかけることが重要になります。
これは、人間社会におけるリーダーシップにも
通じる考え方ではないでしょうか。
相手を無理に動かそうとするのではなく、
安心して行動できる環境を整え、信頼関係を築いていく。
馬との関わりは、そうしたリーダーシップのあり方を
考える機会にもなります。
ただし、馬との体験によって
実際にリーダーシップ能力がどの程度向上するのかについては、
今後さらなる科学的検証が必要です。
馬が教えてくれる、人と人とのつながり
私たちは日常生活の中で、
言葉によるコミュニケーションに頼りがちです。
しかし、相手の表情やしぐさ、声の調子、距離感など、
言葉以外の情報も人間関係では大切な役割を果たしています。
馬とのふれあいは、こうした非言語コミュニケーションの
重要性を改めて感じさせてくれます。
そして何より、馬との関係を築こうとする時間そのものが、
相手を理解し、尊重する姿勢について
考える機会になるのではないでしょうか。
馬は、競馬や乗馬だけの存在ではありません。
人の学びや成長を支え、ときには
人と人との関係を見つめ直すきっかけにもなり得る動物です。
馬が私たちの暮らしに関わる可能性は、
まだまだ広がっているように思います。
参考資料:「馬ライフ」2026年第8号(株式会社メトロポリタンプレス)

執筆者:朝岡紀行(獣医師)
・アンジェス動物病院 院長
・Anges Horse Wellness Care Service 主宰
犬・猫のホームドクターとしての一次診療に加え、
現在は馬の健康管理・ウェルネスケアにも取り組んでいます。
乗馬クラブや牧場における健康管理、飼養管理やケア体制への助言、馬の臨床獣医師との連携など、
現場の課題に寄り添いながら、新しいウェルネスケアの形を育んでいます。
私が目指しているのは、
「犬猫の一次診療動物病院院長 × 馬も診る総合獣医師」として、
犬・猫に加え、馬の健康を支えることを通じて、
人と動物がより健やかに共生できる社会づくりに貢献することです。
犬や猫、馬に関わる皆さまと知見を共有し、
新しい価値を共に創っていけることを楽しみにしています。
Anges Horse Wellness Care Service は、
「Healing Through Horses ~馬を通して、人が自分らしく羽ばたく~」
をコンセプトに、人と馬のウェルネスを育むことを目指す取り組みです。
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