馬糞は「廃棄物」ではなく地域資源になる|茅ヶ崎市のアンジェス動物病院|土日祝診療可で安心のペットケア

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馬糞は「廃棄物」ではなく地域資源になる

馬糞は「廃棄物」ではなく地域資源になる|茅ヶ崎市のアンジェス動物病院|土日祝診療可で安心のペットケア

2026年8月28日

馬糞は「廃棄物」ではなく地域資源になる

大切な家族の『声なきサイン』を見逃さないために。
神奈川県茅ケ崎市、アンジェス動物病院 院長 獣医師の朝岡紀行です。

犬・猫の一次診療で培ってきた総合的な視点を基盤に、
現在は馬の健康管理・ウェルネスケアの分野にも活動を広げています。
小動物から馬までを視野に入れる“総合獣医師”として、
人と馬のより良い関係づくりにつながる獣医療とケアの可能性を探究しています。

Anges Horse Wellness Care Service
Healing Through Horses ~馬を通して、人が自分らしく羽ばたく~


馬を飼育する牧場や乗馬クラブでは、
毎日のように馬糞・尿・敷料が発生します。
これらは放置すれば臭気や害虫、処理コストの原因になりますが、
見方を変えれば、土づくりに役立つ有機資源でもあります。
特に馬糞は、単に肥料成分を供給するだけでなく、
土壌をふかふかにし、水もちや通気性を改善する
「土壌改良材」として大きな価値があります。

馬糞堆肥の本当の価値は「肥料+土づくり」

馬糞には窒素・リン酸・カリといった肥料成分が含まれます。
ただし、鶏糞のような高濃度で速効性のある肥料とは少し性格が違います。
馬糞堆肥の強みは、
未消化の植物繊維を多く含み、有機物として土に働きかける点にあります。
完熟させて畑や牧草地、家庭菜園に入れることで、
土壌有機物を増やし、団粒構造を育て、
保水性・排水性・通気性を改善する効果が期待できます。

つまり、馬糞堆肥は「作物をすぐ大きくする肥料」というより、
土そのものを育てる資材です。
化学肥料だけでは補いにくい土の物理性や微生物環境を整えることで、
長い目で見た農地の力を高めてくれます。

馬糞だけでなく「敷料」と「尿」まで含めて考える

厩舎(馬が生活する建物)から出るものは、
純粋な馬糞だけではありません。
実際には、尿を吸ったわら、おがくず、ウッドチップなどの
敷料が混ざっています。
この「馬糞+尿+敷料」を一体の資源として設計することが、
良い堆肥づくりのポイントです。

馬糞は窒素源
敷料は炭素源
尿は窒素やカリウム、水分の供給源になります。
これらが適切なバランスで混ざると、
微生物が働きやすくなり、好気性発酵が進みます。
結果として、臭気を抑えながら温度が上がり、
雑草種子や未熟有機物の問題を減らし、
扱いやすい完熟堆肥へと近づいていきます。

わらとおがくずでは、堆肥化のしやすさが違う

敷料(家畜の寝床に敷くもの)としてよく使われる
わらとおがくずには、それぞれ特徴があります。

わらは比較的分解が進みやすく、
馬糞や尿と混ざることで堆肥化しやすい材料になります。
早く良質な堆肥を作りたい場合には、扱いやすい選択肢です。

一方、おがくずや木質チップは吸水性が高く、
厩舎管理の面では優れています。
尿を吸収しやすく、馬房を清潔に保ちやすい
という利点があります。
ただし、木質系の材料は炭素が多く、
リグニン(植物の細胞壁を構成する主要な成分)など
分解されにくい成分も含むため、
完熟までに時間がかかりやすい点には注意が必要です。

未熟なおがくず入り堆肥をそのまま畑に入れると、
微生物が分解のために土壌中の窒素を使い、
一時的な窒素不足を起こすことがあります。
おがくずを使う場合は、
含水率、切り返し、酸素供給、熟成期間を
しっかり管理することが大切です。

尿も捨てずに活かす——ただし液肥化は慎重に

馬の尿には窒素やカリウムが含まれており、
肥料資源として利用できます。
とはいえ、尿だけを液体として集めて液肥化するには、
貯留設備、臭気対策、運搬・散布方法などを考えなければなりません。
尿素が分解されるとアンモニアが発生し、
窒素が失われたり臭気の原因になったりするためです。

小規模から中規模の馬施設では、
尿だけを分離して液肥にするより、
敷料に吸収させて馬糞と一緒に堆肥化する方が現実的です。
わらやおがくずが尿を抱え込み、
馬糞と混ざることで、発酵に必要な水分と栄養分を保ちやすくなります。

地域循環型の馬産業へ

馬糞堆肥の意義は、単なる廃棄物処理にとどまりません。
第一に、糞尿を適切に処理することで
臭気や害虫、環境負荷を減らせます。
第二に、完熟堆肥として
農地や家庭菜園、果樹、花き、牧草地へ還元できます。
第三に、馬施設と地域の農家、園芸家、住民をつなぐ
循環型の仕組みに発展させることができます。

たとえば、馬房から出た糞・尿・敷料を堆肥化し、
その堆肥を地域の畑や牧草地に戻す。
そこで育った作物や牧草が、再び馬や人の暮らしを支える。
こうした循環ができれば、
馬糞は「処理に困るもの」ではなく、馬が地域に生み出す有機資源になります。

もちろん、堆肥として販売・譲渡する場合には、
肥料に関する法制度や成分表示、品質管理の確認が必要です。
雑草種子、未熟有機物、臭気、成分のばらつき
などにも注意しなければなりません。
だからこそ大切なのは、「馬糞をそのまま使う」のではなく、
好気性発酵を経た完熟馬糞堆肥」として設計することです。

馬糞活用は、土づくりと地域づくりの入口

馬糞堆肥は、派手な肥料ではありません。
しかし、土を育て、農地を支え、
地域内で資源を循環させる力を持っています。
わら、おがくず、尿の特性を理解し、
適切に発酵・熟成させれば、
馬施設にとっての処理課題は、
地域農業とつながる価値ある資源へと変わります。

馬糞をどう扱うかは、
馬産業の環境対応を考えるうえで避けて通れないテーマです。
そして同時に、地域の土づくり、
農業、暮らしをつなぐ可能性を秘めたテーマでもあります。
馬糞を「廃棄物」と見るか、「地域資源」と見るか。
その視点の転換こそが、
これからの馬を取り巻く環境づくりの
大きな一歩になるのではないでしょうか。

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