2026年4月11日

大切な家族の『声なきサイン』を見逃さないために。
神奈川県茅ケ崎市、アンジェス動物病院 院長 獣医師の朝岡紀行です。
「動物病院で暴れてしまう」
「爪切りや歯みがきを嫌がる」
そんな悩みを持つ飼い主さんに、ぜひ知っていただきたいのが
ハズバンダリートレーニングです。
ハズバンダリートレーニングとは、犬が診察やお手入れ、治療などに
自ら協力できるよう支援するトレーニング方法です。
無理に押さえつけたり、
我慢させたりするのではなく、
犬の気持ちを尊重しながら進めることを大切にしています。
ハズバンダリートレーニングの基本的な考え方
「正の強化」と「Choice & Control」
このトレーニングの土台となるのが正の強化です。
できた行動を褒めたり、ごほうびを与えたりすることで、
犬は「やってみよう」「またやりたい」と前向きに参加できるようになります。
もう一つの重要な考え方が、
Choice & Control(選択とコントロール)です。
犬が
• 「続けられる」
• 「もうやめたい」
という意思表示をできる環境を整えることで、
恐怖や不安、ストレス反応を
大きく減らすことができます。
例えば、
爪切りの途中で犬が足を引いた場合、
• 無理に続けるのではなく
• 一度やめて、落ち着いたらごほうびを与える
この経験を重ねることで、犬は
「嫌だと言えば止まってもらえる」
「自分には選択肢がある」
と学び、次回以降も安心して参加しやすくなります。
どんな場面で役立つの?
ハズバンダリートレーニングは、動物病院だけでなく
毎日の暮らしの中で活用できます。
具体的なトレーニング例
① 爪切りトレーニング
ステップ例
1.爪切り道具を見せる
2.足先を優しく触る
3.爪切りを足に軽く当てる
4.1本だけ切る
各ステップで犬が落ち着いていられたら
褒めてごほうびを与えます。
途中で嫌がったら、その時点で終了します。
「最後までやらないとダメ」ではなく、
「今日はここまでで成功」と考えるのがポイントです!
② 歯みがきトレーニング
具体例
• 初日は口元に指を近づけるだけ
• 次は唇に軽く触れる
• その次に歯ブラシを見せる
犬が嫌がらずにいられたら、その都度ごほうびを与えます。
いきなり歯を磨こうとしないことが、成功への近道です。
③ 体重測定の練習
体重計の上にごほうびを置き、犬が自分から乗るのを待ちます。
• 片足が乗ったら褒める
• 4本乗れたら大きく褒める
これを繰り返すことで、
「体重計=怖いもの」から
「体重計=良いことが起こる場所」へと印象が変わります。
④ 採血・点滴時の姿勢保持
例えば「横になってじっとする」練習をする場合、
1.合図で横になる
2.数秒キープ
3.できたらごほうび
慣れてきたら、
• 保定される
• 腕に軽く触れられる
など、実際の処置に近づけていきます。
飼い主さん・犬・病院スタッフ、みんなにメリットがある✨
ハズバンダリートレーニングは、安全性の向上にもつながります。
具体的なメリット
• 犬が落ち着いて協力できる
• 噛みつきや暴れるリスクが減る
• 飼い主さんの精神的負担が軽くなる
• 動物病院スタッフも安全に処置できる
結果として、犬にとっても人にとっても、
安心できるケアの時間になります。
受診動作訓練との違い
ハズバンダリートレーニングは
「受診動作訓練」と呼ばれることもありますが、
単に診察を受けるための練習ではありません。
• 犬の気持ちを尊重する
• 無理な強制をしない
• 長期的な信頼関係を築く
という、より広い視点での動物福祉の向上
を目的としています。
まとめ|犬のペースを大切にすることが成功のカギ
ハズバンダリートレーニングで最も大切なのは、
無理をしないこと、
そして犬のペースを尊重することです。
日常生活の中で少しずつ取り入れることで、
犬は
「ケアの時間=嫌な時間」ではなく
「ケアの時間=安心できる時間」
だと感じられるようになります。
愛犬との信頼関係を深める第一歩として、
ぜひハズバンダリートレーニングを取り入れてみてください。
