2026年6月06日

大切な家族の『声なきサイン』を見逃さないために。
神奈川県茅ケ崎市、アンジェス動物病院 院長 獣医師の朝岡紀行です。
犬猫の一次診療とともに、獣医療の可能性を広げるため、現在は馬の臨床研究にも携わっています。
道ばたや庭先で、小さな動物の赤ちゃんを見かけると、
思わず「助けてあげたほうがいいのでは」と感じることがあります。
ひとりでいるように見えたり、弱っているように見えたりすると、
なおさら心配になりますよね。
でも実は、その“すぐ助けたい”という気持ちが、
野生動物にとっては負担になってしまうこともあります。
見つけたときに本当に大切なのは、慌てて連れ帰ることではなく、
その子にとって何が一番よいのかを落ち着いて考えることです。
「ひとりでいる=捨てられた」ではない
道ばたや庭先で、タヌキやリスの子、地面にいる小鳥のひなを見つけると、
「親とはぐれたのかも」「今すぐ助けなきゃ」と感じる人は多いと思います。
けれど実際には、それは野生ではよくある自然な姿です。
多くの野生動物は、外敵に見つかりにくくするため、
わざと子どもから離れて行動します。
鳥のひなも、巣立ち直後はまだ上手に飛べず、
地面で親を待っていることがあります。
人の目には心細そうに見えても、
必ずしも危険な状態とは限らないのです。
やさしさが、かえって命を奪ってしまうことも
問題なのは、「保護したつもり」の行動が、
赤ちゃん動物にとって大きなストレスになることです。
野生動物はとても繊細で、
人に触れられたり、知らない場所へ移されたりするだけで
弱ってしまうことがあります。
さらに、善意で牛乳や食べ物、水を与えても、
それが体に合わず命にかかわる場合もあります。
特に生まれたばかりの動物は、
親からしか得られない栄養や免疫が必要です。
人が一生懸命世話をしても、
本来の母親の役割を完全に代わることはできません。
動物好きな人ほど気をつけたい理由
少し意外ですが、こうした連れ去りは、
動物に関心がある人ほど起こしやすいといわれています。
かわいい、助けたい、苦しませたくない。
その気持ち自体はとても自然で、決して悪いものではありません。
ただ、人間の赤ちゃんを思い浮かべる感覚を、
そのまま野生動物に当てはめてしまうと判断を誤りやすくなります。
野生動物の子育ては、人間とは大きく違います。
だからこそ「かわいそうに見える」だけで行動せず、
まずは本当に介入が必要かを考えることが大切です。
人に慣れすぎることも、野生では大きなリスク
もうひとつ見落とされがちなのが、
人に育てられたことで起きる「慣れすぎ」の問題です。
生まれたばかりの時期に人と長く接すると、
自分の仲間ではなく人間を頼るようになってしまうことがあります。
そうなると、
自然の中で生きるために必要な行動を学びにくくなり、
野生に戻ることが難しくなる場合があります。
見た目には元気になったように見えても、
その先の暮らしまで考えると、
人が関わりすぎることは必ずしも助けになるとは限りません。
野生動物の赤ちゃんを見つけたら、どうする?
基本は、
「触らない・連れ帰らない・すぐに食べ物を与えない」です。
明らかにけがをしている、道路の真ん中にいるなど
緊急性が高い場合を除いて、
まずは少し距離を取って様子を見るのがよいとされています。
判断に迷うときは、自分で抱え込まず、
自治体の担当窓口や野生動物保護の専門機関に相談するのが安心です。
神奈川県の場合👇
神奈川県自然環境保全センター
大切なのは、目の前の気持ちだけで動くのではなく、
その動物がこれからも野生で生きていけるかまで考えること。
本当のやさしさは、すぐに手を出すことではなく、
必要なときだけ正しく助けることなのだと思います。
