2026年10月13日

大切な家族の『声なきサイン』を見逃さないために。
神奈川県茅ケ崎市、アンジェス動物病院 院長 獣医師の朝岡紀行です。
犬・猫の一次診療で培ってきた総合的な視点を基盤に、
現在は馬の健康管理・ウェルネスケアの分野にも活動を広げています。
小動物から馬までを視野に入れる“総合獣医師”として、
人と馬のより良い関係づくりにつながる獣医療とケアの可能性を探究しています。
Anges Horse Wellness Care Service
Healing Through Horses ~馬を通して、人が自分らしく羽ばたく~
「ウマには胆嚢がない」と聞くと、
少し意外に感じる方も多いのではないでしょうか。
ヒトや犬、猫には胆嚢があります。
では、なぜウマには胆嚢がないのでしょう。
そして、胆嚢がなくても脂肪をきちんと消化することができるのでしょうか。
今回は、ウマの食生活と消化のしくみから考えてみたいと思います。
胆嚢は何をしている臓器?
胆汁は肝臓で作られ、
食物に含まれる脂肪の消化を助ける働きをしています。
脂肪を細かく乳化することで、
膵臓から分泌される脂肪分解酵素
「リパーゼ」が作用しやすい状態にします。
胆嚢は、この胆汁を一時的に蓄えておくための袋状の臓器です。
例えば、肉食動物のように短時間にある程度まとまった量を食べ、
その後しばらく食べないという食生活では、
食事をしたタイミングで多くの胆汁が必要になります。
そのため、胆嚢に胆汁を蓄えておくことは理にかなっています。
一日中少しずつ食べるウマ
一方、ウマ本来の食生活は大きく異なります。
野生に近い環境では、
ウマは一日の長い時間をかけて、草を少しずつ食べ続けます。
そのため、食事のたびに胆嚢から大量の胆汁を放出するというよりも、
肝臓で作られた胆汁が胆管を通して
持続的に十二指腸へ流れていく仕組みになっています。
このような採食スタイルが、
ウマに胆嚢がないことと関係しているのではないか
と考えられています。
ただし、「草を一日中食べるから胆嚢がなくなった」
と単純に説明できるわけではなく、
胆嚢の有無と採食様式、消化管の構造との関係については、
まだ分かっていない部分もあります。
胆嚢がなくても脂肪は利用できる
以前は、
「ウマには胆嚢がないので、脂肪を分解する能力が低いのではないか」
と考えられていました。
しかし現在では、
肝臓から胆汁が持続的に分泌されることで、
ウマも脂肪を効率よくエネルギー源として
利用できることが分かってきています。
これは、競技馬など
エネルギー要求量の高いウマの栄養管理を考えるうえでも重要です。
エネルギーを増やそうとして濃厚飼料を多くすると、
ウマでは盲腸や大腸の
発酵環境に負担をかける可能性があります。
一方、脂肪は燕麦と比較してエネルギー価が高く、
消化管への負担を抑えながらエネルギーを補う方法として利用されています。
さらに、脂肪の利用によって
筋肉中のグリコーゲン消費を抑えたり、
エネルギー産生時の熱の発生を少なくしたりすることも期待されています。
オメガ3脂肪酸にも注目
脂肪には、単なるエネルギー源以外の役割もあります。
代表的なのが、オメガ6脂肪酸やオメガ3脂肪酸といった
「必須脂肪酸」です。
これらは体内で十分に合成できないため、
飼料から摂取する必要があります。
特にオメガ3脂肪酸は、
ウマでも抗炎症作用や血流の改善、毛艶の維持
などとの関連が注目されています。
牧草や燕麦などにも脂肪酸は含まれており、
普段の飼料内容全体を見ながら考えることが大切です。
「胆嚢がない」ことから見えてくるウマらしさ
ウマに胆嚢がないことは、
単なる解剖学的な特徴の一つではありません。
「少量の草を長時間食べ続ける」という、
ウマ本来の生活様式を考えるきっかけにもなります。
胃が小さく、食べ続けることを前提とした消化器を持ち、
後腸では微生物による発酵を利用する――。
ウマの体は、
私たち人間や犬、猫とはかなり異なる食生活に適応しています。
ウマの健康管理を考えるときには、
「何を与えるか」だけではなく、
「本来どのように食べる動物なのか」という視点も、
とても大切なのだと思います。

執筆者:朝岡紀行(獣医師)
・アンジェス動物病院 院長
・Anges Horse Wellness Care Service 主宰
犬・猫のホームドクターとしての一次診療に加え、
現在は馬の健康管理・ウェルネスケアにも取り組んでいます。
乗馬クラブや牧場における健康管理、飼養管理やケア体制への助言、馬の臨床獣医師との連携など、
現場の課題に寄り添いながら、新しいウェルネスケアの形を育んでいます。
私が目指しているのは、
「犬猫の一次診療動物病院院長 × 馬も診る総合獣医師」として、
犬・猫に加え、馬の健康を支えることを通じて、
人と動物がより健やかに共生できる社会づくりに貢献することです。
犬や猫、馬に関わる皆さまと知見を共有し、
新しい価値を共に創っていけることを楽しみにしています。
Anges Horse Wellness Care Service は、
「Healing Through Horses ~馬を通して、人が自分らしく羽ばたく~」
をコンセプトに、人と馬のウェルネスを育むことを目指す取り組みです。
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