2026年10月16日

大切な家族の『声なきサイン』を見逃さないために。
神奈川県茅ケ崎市、アンジェス動物病院 院長 獣医師の朝岡紀行です。
犬・猫の一次診療で培ってきた総合的な視点を基盤に、
現在は馬の健康管理・ウェルネスケアの分野にも活動を広げています。
小動物から馬までを視野に入れる“総合獣医師”として、
人と馬のより良い関係づくりにつながる獣医療とケアの可能性を探究しています。
Anges Horse Wellness Care Service
Healing Through Horses ~馬を通して、人が自分らしく羽ばたく~
ペットフードのパッケージを見ると、
「新鮮なチキンを使用」「生肉使用」「ノンオイルコーティング」など、
さまざまな言葉が並んでいます。
どれも良さそうに見えますが、
それぞれが何を意味しているのか、意外とわかりにくいものです。
診察室でも、
「ミールが入っているフードは避けた方がいいですか?」
「生肉が最初に書いてあるフードの方が良いのでしょうか?」
と聞かれることがあります。
今回は、フード選びの際によく目にする
「肉」「ミール」「オイルコーティング」について解説します。
大切なのは、一つの言葉だけで
「良いフード」「悪いフード」と判断しないことです。
原材料の特徴を知ったうえで、その子に合ったフードを選んでいきましょう。
「肉」と「ミール」は何が違う?
原材料欄を見ると、「鶏肉」「豚肉」などの表示と並んで、
「チキンミール」「フィッシュミール」
といった表示を見かけることがあります。
どちらも動物性タンパク質の原料ですが、
大きな違いは水分量と加工方法です。
「鶏肉」などの肉は、
水分を多く含んだ状態で使用される原料です。
素材本来の風味を生かしやすいという特徴があります。
ただし、生の肉には多くの水分が含まれています。
ドライフードを製造する過程ではその水分が失われるため、
原材料欄の最初に「鶏肉」と書かれていても、
完成したフードの中で同じ割合を占めているとは限りません。
そのため、獣医師の立場からは、
原材料欄の「一番最初に肉が書いてあるか」
だけでフードの栄養価を判断することはおすすめしていません。
原材料表示を見るときには、この点も知っておくとよいでしょう。
「ミール=質が悪い」ではありません
一方の「ミール」は、肉や魚などを加熱し、
水分や脂肪分を減らして乾燥・粉末化した原料です。
代表的なものに、チキンミールやフィッシュミールなどがあります。
水分が少ないため、
タンパク質などの栄養素が濃縮されていることが特徴です。
また、保存しやすく、重量も軽いため、
ドライフードの原料として広く使われています。
「ミール」という言葉を見ると、
「生肉より質が低いのでは?」と
心配になる飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。
しかし、ミールだからといって、必ずしも質が悪いわけではありません。
どのような原材料を使い、
どのように製造・品質管理されているかによって、
その内容は異なります。
良質なミールは、
高タンパクで栄養価の高い原料として利用することができます。
つまり、
「生肉だから良い」
「ミールだから悪い」
と単純に分けることはできないのです。
実際にフードを評価するときには、
原材料名だけでなく、
その製品が犬や猫に必要な栄養をきちんと満たしているか、
メーカーがどのように品質管理しているか、
といった点まで含めて考える必要があります。
ドライフードの表面がテカテカしているのはなぜ?
ドライフードの粒を触ったときに、
「少し油っぽい」
「表面がテカテカしている」
と感じたことはありませんか?
これは、製造の最終工程で油脂を加える
「オイルコーティング」による場合があります。
オイルコーティングには、
フード中の脂質量を調整したり、
嗜好性を高めたりする役割があります。
また、加熱工程の影響を受けやすい脂肪酸やビタミンEなどを、
製造後に加える方法として利用されることもあります。
一方で、フードの表面に付着した油は空気に触れやすいため、
保存状態によっては酸化しやすくなる点には注意が必要です。
特に大袋を長期間かけて与えている場合には、
「どのフードを選ぶか」だけでなく
「開封後にどのように保存するか」も重要です。
開封後は袋をしっかり閉じ、
高温多湿や直射日光を避けて保管することが大切です。
「ノンオイルコーティング」なら良いフード?
最近では、「ノンオイルコーティング」と
表示されたフードも見かけるようになりました。
これは、製造後に
粒の表面へ油を吹き付ける工程を行っていないフードです。
表面がベタつきにくいなどの特徴があり、
製品によっては、
水分を吸収しやすく、粒が崩れやすいことを特徴としているものもあります。
ただし、オイルコーティングの有無だけで、
フード全体の良し悪しを判断することはできません。
「ノンオイルだから体に良い」「オイルコーティングだから悪い」
という医学的な二択ではありません。
あくまで製造方法の違いの一つとして考えるのがよいでしょう。
大切なのは、
原材料、栄養バランス、製造方法、品質管理などを総合して考えることです。
獣医師として重視したいのは「その子に合っているか」
ペットフードには、
「生肉使用」
「ミール不使用」
「ノンオイルコーティング」
など、さまざまな特徴が表示されています。
もちろん、これらもフード選びの参考になります。
しかし、一つの特徴だけを取り上げて、
「これは良いフード」
「これは悪いフード」
と判断してしまうのはおすすめできません。
同じ「ミール」でも品質はさまざまですし、
生肉を使っているからといって、
それだけで栄養バランスが優れているとは限りません。
私たちが診療の中で重視するのは、
「宣伝文句として何が書かれているか」よりも、
そのフードを食べている犬や猫の
体重、便の状態、皮膚・被毛、食欲、持病
などがどう推移しているかです。
フード選びで最も大切なのは、パッケージのイメージではなく、
その子に必要な栄養が適切に含まれていることです。
「どのフードを選べばよいかわからない」
「今食べているフードが本当に合っているのか気になる」
そんなときは、原材料表示だけで悩まず、
普段食べているフードの商品名やパッケージが分かるものをお持ちいただき、
動物病院でご相談ください。

執筆者:朝岡紀行(獣医師)
・アンジェス動物病院 院長
・Anges Horse Wellness Care Service 主宰
犬・猫のホームドクターとしての一次診療に加え、
現在は馬の健康管理・ウェルネスケアにも取り組んでいます。
乗馬クラブや牧場における健康管理、飼養管理やケア体制への助言、馬の臨床獣医師との連携など、
現場の課題に寄り添いながら、新しいウェルネスケアの形を育んでいます。
私が目指しているのは、
「犬猫の一次診療動物病院院長 × 馬も診る総合獣医師」として、
犬・猫に加え、馬の健康を支えることを通じて、
人と動物がより健やかに共生できる社会づくりに貢献することです。
犬や猫、馬に関わる皆さまと知見を共有し、
新しい価値を共に創っていけることを楽しみにしています。
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