視覚リハビリテーションと盲導犬〜「犬」への関心を、その先にある「人」への理解へ〜|茅ヶ崎市のアンジェス動物病院|土日祝診療可で安心のペットケア

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視覚リハビリテーションと盲導犬〜「犬」への関心を、その先にある「人」への理解へ〜

視覚リハビリテーションと盲導犬〜「犬」への関心を、その先にある「人」への理解へ〜|茅ヶ崎市のアンジェス動物病院|土日祝診療可で安心のペットケア

2026年3月28日

視覚リハビリテーションと盲導犬〜「犬」への関心を、その先にある「人」への理解へ〜

最終更新 : 2026年3月 (2020年記事を再編)

この記事は2020年に執筆したものですが、2026年現在の最新データと社会情勢に合わせて、
全面的に加筆・修正したものです。

 

大切な家族の『声なきサイン』を見逃さないために。
神奈川県茅ケ崎市、アンジェス動物病院 院長 獣医師の朝岡紀行です。

 

街で見かける盲導犬。その健気な姿に私たちはつい目を奪われがちです。
しかし、盲導犬育成事業の本質は、犬の訓練そのものではなく、
視覚に障害を持つ方の「もう一度、自分らしく生きる」を支えることにあります。
「犬」の背後にいる「人」の存在に、改めて心を寄せてみませんか。

 「見えない」ことの多様性を知る

皆さんは「視覚障害」と聞いて、どのような状態を想像されるでしょうか。
かつての私もそうでしたが、多くの方が
「目の前が真っ暗で、全く見えない状態」をイメージするのではないでしょうか。

しかし、実際には光を全く感じない「全盲」の方は、
視覚障害者全体の中では少数派だと言われています。
視覚障害の多くは、病気や事故などによって、
人生の途中で「生活に支障をきたすほど見えにくくなってしまった」という中途失明や、
弱視(ロービジョン)の方々なのです。

「見えにくさ」には、驚くほどの多様性があります。

・視野狭窄: 筒を覗いているように、中心しか見えない。
・中心暗点: 見ようとする中心部だけが欠けて見えない。
・羞明(しゅうめい): 光を極端に眩しく感じ、輪郭がぼやける。
・霧視(むし): 常に霧がかかったように白く霞んで見える。

このように、一人ひとり困っていることが全く異なります。
街で白杖を持っていたり、盲導犬を連れていたりする方が、
スマホを操作していたり、何かを凝視していたりするのを見て不思議に思う方がいるかもしれませんが、
それはその方の「残存視力」や「見え方の特性」を活かして生活されている証なのです。

 「視覚リハビリテーション」としての盲導犬

ある日突然、あるいは徐々に視力を失っていく恐怖や喪失感は、計り知れません。
仕事ができなくなる、一人で外出するのが怖くなる、趣味を諦める……。
そうした絶望の中から、もう一度自信を持って社会と繋がり、
自立した生活を取り戻すプロセスを「視覚リハビリテーション」と呼びます。

盲導犬育成事業は、このリハビリテーションの極めて重要な一環です。

盲導犬は、単なる「歩行の補助ツール」ではありません。
段差や障害物を教えるといった物理的なサポートはもちろんですが、
何よりも「外の世界へ踏み出す勇気」をユーザーに与えてくれる、
かけがえのないパートナーなのです。

「犬」に注目が集まることの功罪

盲導犬の話題になると、どうしても「犬」の部分に注目が集まりがちです。
例えば、パピーウォーカー(子犬を育てるボランティア)の献身的な姿や、
盲導犬訓練士が犬の個性を引き出すための懸命な努力。
これらは雑誌やテレビでもよく取り上げられ、多くの感動を呼びます。
もちろん、こうしたボランティアの方々の支えなくしてはこの事業は成り立ちませんし、
訓練士が犬にとっての最善の道を探るプロセスは、非常に意義深いものです。

しかし、ここで私たちが忘れてはならない視点があります。
それは、「この事業は、誰のために、何のために行われているのか」という点です。

盲導犬育成事業は、究極的には「犬のため」ではなく、
「視覚障害者の自立と社会参加のため」にあるものです。
犬の賢さや可愛らしさ、ボランティアの美談だけで完結させてしまうと、
肝心のユーザーが抱える苦労や、社会的なバリア(障壁)への理解が
おざなりになってしまう危険性があります。

私たちにできること:犬ではなく「人」に心を寄せる

私たち動物好き、犬好きは、街で盲導犬を見かけると、
ついついその動きをつぶさに観察したり、
「お利口ね」と声をかけたくなったりしてしまいます
(※仕事中の盲導犬には、声をかけたり目を合わせたりしないのがルールですが)。

ですが、その際、私たち一人ひとりが意識すべきは、
ハーネスを握っている「人」の方にこそ心を寄せることです。

・この方は今、スムーズに歩けているだろうか。
・交差点で信号が変わるのを待って、不安を感じていないだろうか。
・建物への入店拒否など、不当な扱いに遭っていないだろうか。

「犬が頑張っているから助ける」のではなく、
「一人の市民として、見えにくさという不自由を抱えながら歩いている隣人を尊重する」。
そのための手段として盲導犬がいる、という順番で考えることが大切です。

最後に

獣医師という仕事柄、私は多くの「働く犬たち」と出会います。
彼らは皆、驚くほど誇り高く仕事をしていますが、
その先には必ず「その犬を必要としている人」がいます。

視覚障害者が抱える症状や困難は、目に見えにくいものかもしれません。
しかし、私たちが少しだけ想像力を働かせ、
犬の賢さに感動するのと同じくらいの熱量で「ユーザーの生活」に関心を持つことができれば、
社会はもっと優しくなるはずです。

もし街で盲導犬ユーザーが困っている様子を見かけたら、
犬をじっと見るのではなく、ユーザーの方へ「何かお手伝いしましょうか?」と
声をかけてみてください。

その一言こそが、
盲導犬が目指す「障害の有無に関わらず、誰もが自由に歩ける社会」への
第一歩になると信じています。

 

執筆者:朝岡紀行(獣医師)
神奈川県茅ケ崎市のアンジェス動物病院院長。
統合医療を中心に、予防医療から高齢動物医療まで幅広く診療を行っています。飼い主様と丁寧に向き合う診療を大切にしています。

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