2026年2月03日

最終更新:2026年2月 (2021年記事を再編)
この記事は2021年に執筆したものですが、
2026年現在の最新データと
社会情勢に合わせて、
全面的に加筆・修正したものです。
大切な家族の『声なきサイン』を見逃さないために。
神奈川県茅ケ崎市、アンジェス動物病院 院長 獣医師の朝岡紀行です。
SNSなどで珍しい動物を目にする機会が増えた現代、
エキゾチックアニマルへの憧れを持つ方が増えています。
しかし、日々動物の命と向き合う獣医師として、
私たちはその背景にある「見えにくいリスク」を強く危惧しています。
10代の約4割が「飼育に憧れ」を持つ現状
2021年のWWFジャパンの調査では、
犬猫以外の野生由来の動物を
「飼ってみたい」と考える層は
全世帯で17%、10代では39%に達しています。
若い世代を中心に、珍しい動物との暮らしを望む声は
無視できないほど大きくなっています。
しかし、その一方で野生動物のペット利用に伴う
「5つのリスク」を正しく認識している人は、
わずか32%に留まっています。
野生動物のペット利用に伴う5つのリスク
1. 絶滅の危機(乱獲による生態系崩壊)
2. 密輸・違法取引(残酷な密輸過程での命の喪失)
3. 動物福祉の欠如(家庭環境での適切な飼育の困難さ)
4. 動物由来感染症のリスク(未知の病原体との接触)
5. 外来種問題(安易な放流による国内生態系への打撃)
知識を得ても、なぜ「飼育意向」は変わらないのか
調査結果で最も衝撃的だったのは、
これらのリスクを知り「問題がある」と認識した人のうち、
実際に飼育を諦める(意向を下げる)人は
わずか3%だったという点です。
「問題があるのは承知しているが、
それでも自分の手元に置きたい」
この強い個人的な所有欲が、
絶滅の危機にある命をさらに追い詰めてしまう。
知識を届けるだけでは解決できないというこの事実は、
私たち獣医療関係者にとっても、
非常に重い課題であると感じています。
「密輸」と「不適切な飼育」の現実
2007年から2018年までの間に、
日本への密輸が水際で発覚した野生動物は
1,161頭にのぼります。
これらは氷山の一角に過ぎません。
また、運良く(あるいは運悪く)飼い主の手元に届いたとしても、
野生動物の多くは家庭での健康管理が極めて難しく、
病院に運び込まれたときには手遅れというケースも少なくありません。
「好きだから飼う」ことが、
その動物の「福祉を奪う」ことになりかねないのが
野生動物飼育の難しさです。
最後に
身近な昆虫や魚を採集して観察することも、
広義では野生動物の飼育です。
そこには「命」への学びがありますが、
同時に「その種を絶滅させない」
「最後まで責任を持つ」
という倫理観が不可欠です。
ペットとの暮らしは、私たちに多くの喜びを与えてくれます。
しかし、その喜びが「絶滅」や「虐待」の結果であってはなりません。
私たちは専門家として、
野生動物のペット利用をゼロにするための取り組みを、
これからも皆さんと共に考えていきたいと願っています。
